パピルスマジック その2

美術館の中は涼しくて、間接照明が点いていた。壁画はレプリカだが、金で出来た装飾品やミイラは本物だと言う。どれもこれも神秘的だ。そんな中でも動物の顔をもつ神々の像は迫力がある。

青磁「ホルス神、アヌビス神、バステト女神…こっちはトト神か」

大地「すげぇ。鳥や犬、猫の頭がついた人だ」

神楽「半人半妖、じゃなくて半人半獣…」

 

そこへ一人の男が近づいてきた。

男「人ではない、神様だ。敬意を払え」

大きな体に彫りの深い顔、日本人ではなさそうだ。

大地「うわ、びっくりした」

神楽「きゃ、ごめんなさい」

青磁「失礼しました、ところで貴方は…」

男の後ろから女の人が現れた。凛とした佇まいは壁画に描かれた女神に似ている。

女「いきなり驚かせてごめんなさい。彼は信仰心が篤いのです。私たちはエジプト美術協会の者です」

神楽「こちらこそすみません。神話のこととかあまり知らなくて」

男「神話ではない。史実だ」

女「お止めなさい、セルケト。口を慎んでいなさい」

セルケト「かしこまりました、イシス様」

そこで青磁は時計を確認する。

青磁「神楽、そろそろじゃないか」

神楽「あ、そうだね。じゃあ私達もう行くので。ほら、大地も行くよ」

 

三人はその場を離れた。

大地「ゴツい男だったな。おっかねぇ目付き」

神楽「私も思った。なんかただ者じゃない感じ」

青磁「でもあのイシスって人には素直に従ってたよね。上下関係がしっかりしてそう」

それから休憩所で他愛もない話をした後、三人はピラミッドの縮小モデルを見たり、エジプトの歴史に関する映像を見たりした。間もなく出口が近づいてきた所でイシスが声をかけてきた。

 

イシス「本日は古代エジプト展にお越しくださり誠にありがとうございます。驚かせてしまったお詫びといってはなんですが、こちらを差し上げます」

見るとそれはスカラベの置物とパピルス紙だった。