きみのそばに その7

恵子と僕は四国に来ていた。

 「お兄ちゃんあったよ!」

恵子が店先でしゃがみこむ。

「ほらここ、だるまさんがいっぱい!」

「ほんとだ。ここ、だよな」

店番をしている夫婦は子どものようにはしゃぐ恵子を珍しげに見ている。次に僕の方を向いた。僕は軽く会釈した。

「10年以上前にもここに来たんです。」

恵子は店員に笑顔を向けてそう言った。

「これ、ふたつください」

僕達はその小さなだるまを財布に入れた。

 

「杖、借りていくか」

「えー、大丈夫だよ~。」

「もう子どもの頃と違うからな、俺は借りるよ」

「じゃあ恵子のも借りて!」

もくもくと石段を登る。額に汗を滲ませながら350段目の地点に来た時、恵子が何かを見つけた。

「あれ見て!」

「どうした、恵子?

「パ、フェ!」

「お、パフェだ。食べていくか」

こんぴらさんにパフェがあるなんて知らなかったね!」

「そうだな。何年前からあるんだろうな」

石段に座り、二人でパフェを食べる。

頂上についたらどんな景色が待っているのだろう。